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男性の側の原因による不妊症
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いまでも不妊というと女性に原因があると考えられる方も多いようですが、不妊は決して女性だけに原因のすべてがあるものではありません。不妊症の原因の約30%は男性側あります。不妊症は二人で協力して治すという自覚を持って、男性も検査、治療に積極的に取り組んでください。最初に不妊症の診察を受けるときには男性も検査を受けましょう。
・精子がうまく作られない
・精子が精巣から外に運ばれない
- ●精子がうまく作られない
- 精子は精巣で作られますが、これがうまくいかないと不妊症になります。残念ながら原因不明の場合が多いのですが、ホルモンのバランス異常によって起こることもあります。視床下部や脳下垂体がホルモンの分泌をコントロールする司令塔である点では、男性も女性に似ています。しかし女性のホルモン分泌や生殖全般が、月経、排卵を中心とした性周期にもとづいて規則的に起こるのに対して、男性の精子は常に作られ続けています。
正常な男性ではFSHとLHというホルモンが脳下垂体から分泌されており、精巣では毎日数億匹の精子が作られます。もし、視床下部か脳下垂体に異常があってLHやFSHが分泌されないと精巣は萎縮してしまい、精子は作られなくなってしまいますから、その男性は不妊症になってしまいます。こういった場合には、女性の排卵を誘発するのにも使われるクロミフェンという薬が有効なこともあります。
精巣で精子が作られない原因が先天的な異常による場合もあります。その一つに精巣が陰嚢の中に降りず、お腹の中にとどまったままの停留睾丸という病気があります。陰嚢の中に精巣がないことに気がついたら、子供の時に手術して治しておくのは親の責任です。もし成人してからも睾丸がお腹の中にとどまったままの場合には、手術によって睾丸を陰嚢の中に下げることはできますが、残念ながら大人になってから手術をしても精巣が精子を作り始める可能性はあまりありません。
男性の生殖器に感染が起こって不妊になることもあります。クラミジアや淋菌の感染による不妊症の場合は、病原菌を退治すれば不妊も治すことができます。しかし、成人してからおたふくかぜにかかるとそれから先、精子が全く作られなくなることもあります。おたふくかぜはワクチンで防ぐことができますから、親は子どもの時に受けさせておくべきです。
女性の排卵と同じように男性の精子の産生もストレスや疲労などによる悪影響を受けます。赤ちゃんを作りたいときには男性も心をやすめてリラックスするように努めましょう。働きすぎの男性に男性不妊が多いのは事実です。
精巣は体温より少し低い温度でもっともよく働くようにできています。ですから、きつい下着はおすすめできません。ブリーフよりもボクサータイプのパンツのほうが風通しがよく、精巣の働きには好都合です。
精巣の温度を上げてしまう先天的な異常には、停留睾丸以外にも精巣静脈瘤という病気があります。精巣静脈瘤があると精巣の温度が上がって精子の産生に悪影響を与えます。手術を受ければ精巣で手術前よりたくさんの精子が作られるようになります。
- ●精子が精巣から外に運ばれない
- 精巣でちゃんと精子が作られていても、射精にいたるまでのルートのどこかがブロックされていると、精子は精液として射精されることができませんから不妊症になってしまいます。ブロックされる場所としては、まず精巣上体があげられます。ここには精巣でできた精子を輸精管まで運ぶ長さ約6cmの曲がりくねった細い管が何本も通っており、この管がつまってしまう場合があります。また、精巣上体を出た精子は輸精管に集められて前立腺に向かいますが、ここもつまってしまうことがあります。さらに前立腺で前立腺液や精嚢腺液と混ざった精子は尿道を通って射精されるのですが、ここでも精子は通行止めにあう可能性があります。もしこういった場所にブロックがあった場合には、泌尿器科の先生に手術してもらって、つまったところを治してもらうこともできます。
また、精巣や精巣上体から直接精子を取り出して顕微授精を行うこともできます。
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